「表現芸術家ピアニストの生き様」掲載中

ピアノ譜面台に広げられた本、バイエル第40番。「今日はここからだったんよね」先生は言われ、「昭子ちゃんがどんどん先までさらってきていることは分かってるんだけど、レッスンには時間帯というものがあるんだからね」

昭子は早速弾き上げる。

楽譜を見追い、弾き終えるのを見定められて先生は「特に問題はないんだけど、次の41番からはこれまでの長調である明るさとは違って、短調といって曲想に暗さが出てくるんよね」

そう言って先生は長調、短調の三和音とそのアルペジオを弾かれ、昭子を諭すように見つめられた。

「それから4小節ごとにタイがかかっている所、そこはワンフレーズとして捉えて弾くことが大切で、そのことを心得た演奏なんよね」

と言われ、昭子は42、3番とまたたく間に弾き上げ、先生はその上44番を弾く昭子にポイントとなる説明を加えられた。さらに44番では全音符から8分音符までの各音符の長さを正しく捉えるためのカウントの大切さ。45番から64番までは8分音符が加わることによるさまざまな課題。たとえば付点リズム、手の拡張、52番の8分の6拍子(ここでは6拍のカウントのあと、8分音符3つを1拍とした2拍のカウントをして、2拍子の拍感を捉えさせること)などなど、そして、58、9番と弾き続き、これまでただ早く終わらせたいばかりの曲だったのが、60番にいたって初めてイ短調の暗いもの悲しい翳りが見えてきて、昭子にとっては大人の世界を垣間見られる、そんな気がする今までにないく深い印象を得る曲。この曲、教則本半ば以降はさすがに音楽的な気分を味わえる曲もあって、ただ弾きこなすだけではなく楽しさを味わえる曲もあった。たとえば66番のパターンが同じでも、リズムが楽しく、メロディがきれいで弾きやすく、上手になったような気分に。また78番では子供の手に和音がつかみやすく、豪華に聞こえる。

(そして91番のアンサンブル曲では、「不思議なランプ」のような……な曲)続いて100番では装飾音が素敵な上に何と言っても手を交差させて弾く、子供ながらにその格好良さは格別な曲として昭子に受け止められるのだった。

こうしてバイエルを終えた昭子であったが、出来る者への妬み、あるにはあるもので昭子も同クラスの、それも学級委員というクラス全体に影響力のある人物からいじめを受けることになるのだった。

 

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