表現芸術家 ピアニストの生き様

ピアニスト 杉谷昭子と親交の深い、調律師松永正行が彼女の歩んできた道を書き記す。

 

杉谷昭子先生 追悼メッセージ

死は予期せず起こるものですが、この度杉谷先生の死はあまりにも早すぎ、私にとってかけがえのない人を失った、という思いでいっぱいです。

杉谷先生はまさに神様が私に「調律師」という職業を全うするにあたってめぐり合わせてくださった方でした。

先生は美しい音によるピアノ音楽づくりを目指されていて、そのために私の「より多くの人に共感を得られる響きとは」という調律の目標にとても共感してくださり、長く調律師として起用くださいました。

それほどに美しいピアノ音楽づくりを目指された先生の強い意志を、一人でも多くの方にご理解いただくためにと私は先生を主人公にした本を書くこと試みています。

あまりにも早いご逝去に、これからも聞きたいと思っていたことが出来なくなり、本当に残念で悲しい事です。

しかし、先生のことを思い浮かべながら書き続けなければならないと思っております。

このことにより、先生の美しいピアノ音楽づくりを広める一助になればと最後まで書き続けます。

心より先生のご冥福をお祈り申し上げます。

2019/5/8
株式会社松永ピアノ
代表取締役社長 松永正行

杉谷 昭子(Shoko Sugitani)プロフィールはこちら
 ピアニスト 矢田映子、井口秋子に師事して東京藝術大学卒業後ドイツに留学。
 デートレフ・クラウス、エリーザ・ハンゼン、ブルーノ・レオナルド・ゲルバー、アレクシス・ワイセンベルク、クラウディオ・アラウ等に師事。
 1971年エッセン・フォルクヴァングコンクール優勝。 72年マリア・カナルス国際コンクール2位。ミラノ音楽祭出演。 73年ヴィオッティ国際コンクール銀賞。 76年ケルン音楽大学大学院修了。
 旧西独演奏家国家試験で1位を獲得したブラームスのピアノ協奏曲第1番が大手マネージャーに認められ、同年デュッセルドルフでヨーロッパデビュー。
 77年独シュヴァン社で初のソロアルバムをリリース。
 ロンドン・ウィグモアホール及びロイヤル・アルバートホール、アムステルダム・コンセルトヘボウ、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス、ベルリン・シャオシュピールハウス、シュトゥットガルト・リーダーハレ、サントリーホール等で、ロンドン新交響楽団、ベルリン交響楽団、北ドイツ放送交響楽団、シュトゥットガルト・フィルハーモニー管弦楽団、フランツ・リスト室内管弦楽団、ヴュルテンベルク室内管弦楽団、モスクワ室内管弦楽団、プラハ放送交響楽団、フィルハーモニア・フンガリカ、ワルシャワ国立フィルハーモニー、チェコ・フィル六重奏団、ゲヴァントハウス八重奏団、ゲヴァントハウス弦楽四重奏団、ベルリンフィル弦楽五重奏団、ザイフェルト弦楽四重奏団、アマルコルド・クワルテット・ベルリン、NHK交響楽団、新日本フィルハーモニー管弦楽団等と共演。
 また、クララ・シューマン国際ピアノコンクールの審査員をアルゲリッチ、ワイセンベルク、アシュケナージ等と並んで歴任するなど、その活躍はコンサートピアニストにとどまらず、ピアノ教育の最前線にも及び国際的に広がっている。
 1984年リリースのブラームス・ピアノ独奏曲全集、95年のベルリン交響楽団とのベートーヴェン・ピアノ協奏曲全集(ヴァイオリン協奏曲のピアノ版を含む)は、ともに女流としては世界初の快挙として記憶される。
 クララ&ロベルト・シューマンピアノ協奏曲、ベートーヴェン/3大ピアノソナタなど、国内外でのCDリリースも多く、近年ではポリグラムより珠玉の名曲選《カタリカタリ》を発売し、いまだにロングセラーを続けている。
 98年には演奏活動30周年記念の年にあたり、全国縦断の記念コンサートを催すかたわら、ポーランド国立放送交響楽団とモーツァルトのピアノ協奏曲CDを制作。
 ベートーヴェン・ピアノソナタ連続演奏とそのレコーディングも完成し、その精力的な演奏活動は多くの識者の注目を浴びながら、現在に至っている。
 2001年12月ウィーン楽友協会大ホールにて『熱情』ソナタを、2002年11月には東京オペラシティホールにてカジミエシ・コルド指揮ワルシャワ国立フィルとベートーヴェン・ピアノ協奏曲第5番《皇帝》を弾き好評を得る。
 また、シューマン音楽祭でベルリオーズ作曲/リスト編曲《幻想交響曲》を弾き世界的な音楽学者・評論家のヨアヒム・カイザーやマルタ・アルゲリッチから賞賛された。
 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス室内楽定期演奏会には定期的に招聘され、またウィーン・フィルやベルリン・フィルのトップメンバーと室内楽の夕べを各地で展開。
 2008年演奏活動40周年を迎えた。 2008年大晦日、東京オペラシティホールにて日本を代表する16人のピアニストによるベートーヴェン:ピアノソナタ全曲演奏会で「葬送」・「幻想」ソナタを演奏。 2009年3月、珠玉のピアノ名曲選 Vol.2「誰も寝てはならぬ」をリリース、発売記念リサイタルを各地で行った。10月にはベルリンフィルハーモニー弦楽五重奏団とシューベルト『鱒』を共演。 2010年より『ドイツ音楽10年の旅路』を開始。同年12月にはライプツィヒ・ゲヴァントハウス弦楽四重奏団と共演予定。日本を代表するピアニストの一人であると共に国際的に高く評価されている。

 

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