「表現芸術家ピアニストの生き様」掲載中

音楽の授業に、声出し、歌は付き物、ましてや個人所有の楽器などほとんど持つことのできない物不足の時代。授業といえば声を張り上げる、歌、合唱が大半を占め、その伴奏に据え置かれたピアノは、昭子にとっても気になる置物であった。

人数は少なかったにしても、弾ける者にとっては関心を抱かないではおれないピアノ、学級委員長のB子は顕示欲も強く、みんなの前でピアノ演奏のお披露目をしたい、そんな気持ちさえ抱いていた。

もちろん彼女の家は裕福でピアノもあり、同級生の中で自分以上に弾ける者などいるはずのないことを確信していた。

反面、人の気は引くのだが、あえて自分を見せようとはしない昭子。この時点では対照的な二人であった。

実のあるものの噂というものは、立つべくして立つもので、一見無邪気でおとなしそうな昭子ではあったが、A子の漏らした昭子についてのこぼれ話、クラス内でも向上心のある者にまたたく間に知れ渡った。

え、……あの子の家に、あの子が、と奇異に受け止める者もいたが、ことはそれには収まらない。昭子にとって思いがけない不測な事態へと進展してゆく。まず学校とは学びの場。先生は生徒にものを教え込ませる所であり、学ぶ者の優劣、また当人同士の優越意識、起こるべくして起こるもの。ましてや学級委員長のB子は並以上に優越意識の強い生徒。そのB子にとってピアノ演奏についてまさか昭子の方が自分より高い評価を得ることになるなんて思いもよらぬことであった。

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