「表現芸術家ピアニストの生き様」掲載中

またたく間の一週間。昭子にとって苦手な体操の授業が終わり、昼休みをはさんで気になる音楽授業の時間がやってきた。

音楽の授業ならいつも音楽室、という訳ではなく、しかし、今日は昭子とB子のピアノ演奏の弾き較べによる選別が行われる日である。学校にピアノといえば音楽室と講堂にしかなく、あえて音楽室での授業となるのであった。

昼休み、昭子の候補の申し出を促したA子。

「昭子ちゃん、この前、音と音とが離れすぎてて指が届かんで難しい、そう言ったところ弾けるようになったん」自分が候補者として名乗りを上げることを薦めたせいもあってか、A子も気にしているようだった。

「うん、先生に聞いてみたん。下の音から上の音へパッと素早く指を飛ばして弾けばって、私練習したら弾けるようになったん」

「良かったね」親身にあいづちを打つA子。

始業時間に向け音楽室に集まってくる生徒たち。

肩を寄せ合い、話しながら歩く生徒たち。

「ねえねえ、B子ちゃんと昭子ちゃん、自分の得意とする曲、何を弾くんかねー。私もピアノ弾きたいん。どっちが上手いんかね、おもしろい、たぶんB子になると思うん」

「みかんの花咲く丘、私たち歌いながら弾くの聞くんかねー」

ざわつく室内。始業の鐘が鳴って各自、自席に着席。昭子も着席はするものの気はそぞろのようであった。

 

「皆さん」

先生は入室し、教壇の上に置かれた机の前に立ち、生徒たちに向かって大声で呼びかけた。「これから音楽の授業を始めるんですが、先週言ったように今日は学習発表会の合唱伴奏をB子ちゃん、昭子ちゃん、どちらにやってもらうか、二人に弾いてもらって決めよう、ということにしたんでしたよね。皆さんの中にも気にしている人がいるんではないか、そう思えるので、まずは二人に弾いてもらって、そのことを決めてから授業に入ることにしたいと思うんです。いいですよね」

先生の話に注意を傾け聞いていた生徒たち。昭子はもちろん、このことに関心を抱いていた生徒たちもいよいよか、というちょっと堅い雰囲気に包まれた。

「どちらが先に弾くかは今から話し合って決めてもらうにしても、自分の得意とする曲、同じエリーゼのためにだったなんて、先生、思いもかけないことでした」

離れた席の二人は立ち上がり、互いに見合い手まねに口を添えて、B子ちゃんからっ、昭子ちゃんからっ、と勧めあった。結局初めに昭子が弾くことになったのだが、伴奏と得意とする曲、公平性を保たせることから一曲ずつ弾き順を変えるということで話はまとまる。

また、合唱を歌いながらの伴奏を聞き分けるのは難しく、歌については先生が歌い、生徒たちは聞くだけの立場に置かれることになった。

 

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