「表現芸術家ピアニストの生き様」掲載中

秋の文化行事、学習発表会が行われるにあたって昭子のクラスでは歌、先生としては伴奏をしながらの指導の手間、難しさよりも実際伴奏を含め全て生徒が行わなければならないこととして、ピアノ伴奏ができる者を募ることになった。
小学1年のときから仲良しになっていたA子は、昭子が家ではオルガンを弾き、X年生になった今日、ピアノレッスンを受け始めていることから本人が申し出ることを勧め、また周りの承知している生徒達からも後押しがあって申し出ることとなった。結局、候補者としては学級委員長のB子と昭子、二人のみの名が上がることとなった。しかし、厄介なことに、発表曲は1曲。つまり伴奏者はどちらか1人ということである。先生としては学級委員長を押したくても、立場上やはり公平性を保たなければならない。それに時代的にも敗戦後アメリカナイズの波、民主化の影響が押し寄せ始め、知識層に広がり始めようとしていた。
それまで長きに渡って男尊女卑の世相に抑圧感を抱いてきた女性、特に知的女性層たちは敏感に反応していた。レディファーストを建前とする欧米思想、昭子の担任もその影響を受けていて、物事の取り決めについても、つい民主的意識を働かせてしまうのだった。
「皆さん、この度の学習発表会の合唱伴奏について、伴奏者を募ってたんですが、学級委員長のB子ちゃんと、杉谷昭子ちゃん二人だけだったんよね。先生としてはもう少し弾ける人がいるんじゃないか、そう思ってたんですが、二人でしたから、B子ちゃん昭子ちゃん、どっちかに、ということになるんですよね。このままどっちかに、ということになって、それを先生だけが決めるとなると、えこひいきをして、そういうことにもなりかねません。ですから、二人に皆さんの前で弾いてもらって皆さんに決めてもらう。そうすれば公平というもので、皆さん誰にも納得してもらえると思うんです。いいんですよね」……。
異論も承諾もなく、返答のないことから、先生は再度大声で確認を求めた。
「皆さん、いいんですよね」
「ハイ」「ハーイ」バラバラに声が上がった。
「それでは、そのようにさせてもらうんですが、急に今からっていうんではなく、せっかくのことなんだから来週の音楽の時間に……。それまでしっかりさらってもらって、また自分が得意とする曲も1曲聞かせてもらう。そうすることにしましょうよね」
こうして選考の方法は決まった。

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