「表現芸術家ピアニストの生き様」掲載中

「昭子、舞台の準備が出来るまでまだ時間があるんだから、今のうちに少しピアノに触らしてもらっていたらどうなん」
「そう、これまでに昭子さんが弾いたことはあったにしても、それとは違って今日は皆さんにきちっとした形で聞いてもらうんだから。指ならしも含め、ピアノの状態をつかんでおくことも大切と思うんだけど」とGもすすめた。
思いつめた表情を浮かべる昭子。
「そうですね」
そばでその昭子の緊張を推し量る静子は「昭子が弾きとどまることはない思うんだけど、もし、緊張で難しいところの指が回らなくなったときには、そこをぬかして弾いたってええんだから。それよりもピアノに慣れておくためにも触っといたほうがええ、お母さんもそう思うん。もちろん、まがりなりにでも弾き終えてくれるほうがええんよね」
「お母さん、あんまり話さんで」母静子の話を遮り言う昭子。
その緊張した二人の会話にGは気遣いしながら「すいません。ところで、昭子さんどうするんですか?私もピアノには触っといたほうがええ思うんですが」
「はい、すぐに行きます」
合唱伴奏をしたその時のピアノの弾きごこちが今さらのように蘇ってくるのだった。伴奏ということで難しいテクニックを必要とすることもなく、無難に事を終え、ピアノの状態について特に気にするほどの事は無かった彼女だが、今回は昭子にとって難曲のソロである。
第2楽章の特に難しい部分につき、繰り返し弾きこなしてみる昭子であった。

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